火災や盗難から大切な財産を守るために欠かせない耐火金庫。ですが、実は「どれを選ぶか」で守れる安心は大きく変わります。
耐火時間や防盗性能、サイズ、設置場所の条件、日本製と海外製の違いまで耐火金庫選びには知っておきたいポイントがたくさん。用途に合った最適な一台を見つけるためのヒントを、わかりやすくご紹介します。
耐火金庫(防盗耐火金庫)とは、火災による高温や消火時の水・衝撃に耐えられるように設計されたものを指します。
JIS規格では、0.5~4時間の耐火性能や高さ9.1mからの落下試験が義務付けられており、日本で製造された日本製の金庫の多くは、これらの試験をクリアした高品質な金庫が「耐火金庫」として認定されます。
ここ数年、天災をきっかけとした、火災も増加傾向にある日本。火災による損害リスクを大幅に減らすため、用途に応じた耐火性能の選定が重要です。
耐火金庫を選ぶ際、「本当に火災に耐えられるか」が第三者の試験で証明されているかを確認することが重要です。
一般的な耐火金庫の認証規格には、JIS(日本産業規格)とUL規格(米国認証機関の規格)があります。これらの規格試験に合格した耐火金庫には、性能を示すマークが貼付されています。
耐火性能試験合格品 | 急加熱・衝撃落下併用試験合格品 |
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![]() 30分 ![]() 1時間 ![]() 2時間 ![]() 3時間 ![]() 4時間 |
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「急加熱・衝撃落下併用試験」は、高温の炉内に金庫を入れ、急加熱をした後、9.1mの高さから金庫を落下させ、逆さにしてさらに耐火検定の基準に即した過熱を行い、高温の炉内に金庫を放置する、といった非常に厳しい環境で実施します。
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3時間耐火試験合格品 |
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4時間試験合格品 |
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急加熱・耐衝撃試験合格品 |
一般的には、家庭用では60時間耐火、業務用では、60~120時間耐火を選ぶのが一般的です。
一般家庭の火災なら「消防車が到着するまでの時間(平均30分程度)」を想定しており、最低限の安心を確保できます。
書類や通帳、印鑑の保管に適しています。また住宅密集地など火災の延焼リスクが高い地域ならこちらが安心です。
※120分以上の耐火金庫はサイズが大きく重量も増すため、家庭用としては、少し性能が高すぎるかもしれません。
一般的なオフィスや中小規模の事務所で十分なレベルです。
顧客データや大量の重要文書を扱う場合や、商業施設・金融関連・士業事務所など、長時間火災にさらされる可能性がある場所で使用する場合におすすめです。
※用途や各規定により、3~4時間耐火を必要とする業種もあります。
防盗性能金庫とは、工具を用いてこじ開けを試みても、一定時間内に破壊できないことが試験で確認された金庫を指します。
業務用の耐火金庫には欠かせない性能です。家庭用の場合にはややオーバースペックになりやすいものの、ブランド品や貴金属など、金銭的価値の高いもの保管する方や、防犯性能を重視したい方であれば検討の価値があります。
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耐破壊性能試験(TS-15) | ★ | 15分 |
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耐工具試験(TL) | ★★ | 30分 |
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耐溶断・耐工具試験(TRTL) | ★★★ | 30分 |
※日セフ連(日本セーフ・ファニチュア共同組合連合会)による試験と性能基準です。
「耐溶断・耐工具試験(TRTL)」が最も強度が高い性能を搭載しています。強度の試験は、工具だけでなく、衝撃に対する強度の試験もあります。
保管の目的や収納物、量に合わせたサイズと機能は金庫選びの最も重要な要素です。 耐火金庫は、壁に耐火材が入っているため、外寸のサイズに対して、その厚みを含んだ壁面の内寸は、思ったよりも小さく感じるかもしれません。
また、一般的に、サイズが大きくなるほど、充填されている耐火材の量も増すため、それに応じて本体の重量も増していきます。そのため、欲しいと思ったサイズの耐火金庫が、設置場所や建物の床の強度が足りないために設置できない場合もあります。 そこで、金庫の購入を検討する際には、主に下記の点を確認してから選ぶと良いでしょう。
金庫は外寸に対して内寸が小さく感じる場合も多いので、目測ではなく、必ず収納物のサイズをしっかり測定してから購入をしましょう。耐火金庫は隙間のない作りのため、おおよその寸法で購入すると、収納ができないということが多々発生します。
特に扉がある奥行方向は「1-2㎜くらい大丈夫だろう」と無理やり閉めると、内側から収納物が当たって扉を圧迫、かんぬきが動かない、ハンドルが動かない、扉があかない、という事態が発生します。金庫は精密なサイズでつくられています。収納物は必ず金庫の庫内サイズよりも小さなものまで。”たった1㎜”の場合も金庫はワンサイズ上の選択をしましょう。
1枚扉タイプの耐火金庫は、世界共通で、向かって右側に丁番があります。耐火金庫は扉にも耐火材が充填されているため、厚みがあります。そのため、扉を90度開いても扉の厚みが庫内の収納部分に重なり、使いづらくなるため、1枚扉タイプの金庫は、一般的に金庫の右側のスペースに余裕がある場所に設置することをお勧めします。
なお、両開きタイプは、本体の左右にスペースが確保できる場所、また、引き出しタイプのキャビネット金庫は、手前に引き出すため、本体の手前側に十分なスペースが確保できる場所を設置場所として選びましょう。
耐火金庫の購入前には、床の耐荷重の確認は最も重要な事項の1つです。建物によって、その強度は変わりますが、一般的なオフィスビルの場合、1平米あたりの耐荷重は300㎏であることが多いです。
その他、マンション、一戸建てに設置する場合は、それぞれの建物によって、かなり基準が異なるため、金庫の購入を検討したらそれぞれの建物の管理会社、住宅メーカー、また、賃貸やテナントの場合は不動産会社などに確認をしましょう。設置時に条件付きで設置を許可する場合もあるため、注意が必要です。
金庫は重量物なので、搬入路の事前確認が不可欠です。
特にディプロマットの業務用オフィス金庫では、車上渡し不可・搬入経路の事前下見(300kg以上では必須)・養生や床固定の有無などを確認する必要があります。
玄関ドア、廊下、階段の幅を測り、金庫本体が通るか確認しましょう。エレベーターを使う場合は、扉幅・かごの奥行き・耐荷重の確認が必要です。
廊下や階段の手すり、照明、家具など搬入の邪魔になるものがないか確認しましょう。曲がり角では金庫を回転させられるスペースも必要です。
大型金庫は販売店や専門業者に依頼して、安全に搬入・設置することをおすすめします。搬入経路や設置方法について、依頼先としっかり相談しておきましょう。
金庫を選ぶ際に意外と見落とされがちなのが、「国産か海外製か」という視点です。性能だけでなく、デザイン、価格、アフターサポートなども含めて、両者には明確な違いがあります。
日本製の金庫は、JIS(日本工業規格)や防盗試験など厳しい国内基準をクリアしており、品質の高さと精度の良さに定評があります。たとえば、日本アイエスケイ(旧キング工業)やサガワ、クマヒラは、純国産メーカーとして業務用金庫においても警備会社や官公庁などで多数導入されている実績があります。
修理対応・部品供給のスピードや、設置・メンテナンス体制などが整っており、長く安心して使えるのも日本製の魅力です。
外観デザインはシンプルで実用性重視。特に家庭向けでは、ダイヤル式やテンキー式、また最近は指紋認証式や静脈認証、顔認証式、光彩認証式など、堅牢かつ使いやすい機種が豊富に揃っています。
海外製金庫は、見た目の美しさやユニークな機能に優れたものも多く見受けられます。
例えばメーカーごとに以下のような特徴があります。
・ディプロマット
インテリア性を重視する家庭やオフィスに人気。カラーや形状も洗練されています。
・ダイヤセーフ
純国産同等の防盗耐火搭載機種もあります。豊富なラインナップがありながら、安価で安定した品質が人気です。
・コネックス
お客様の声やニーズに応えた機能とアイデアが搭載され、アメリカ大手メーカーも導入しています。
・ブイルセーフ
1時間耐火防盗耐火金庫など、純国産金庫にはない基本スペック+品質の高さ。必要最小限の機能で使いやすく価格面が魅力。
このようにそれぞれの個性とアイデアが詰まったユニークな品揃えの金庫があります。
UL規格(アメリカ)、SP規格(スウェーデン)など、世界的な耐火試験に合格した製品が多く、グローバルな品質基準で製造されています。例えば、1930年代にアメリカで誕生したセントリーセーフは、国内の金庫では珍しい耐火・耐水性能を標準搭載。業務用だけでなく、個人でも金庫を気軽に持てるよう、デザイン性や重さ、性能、鍵式など、あらゆる面でライフスタイルにあった選択にも配慮しています。
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